着物の衿の裏側を見ると、白い生地(衿裏)に金属製のスナップボタン(ホック)が付いている場合があります。
凹凸のペアが一つ、あるいは二つ、最大でも三つというのが付ける数のようです。
このボタン、何のために付いているかというと、着物を着る際には、広衿の場合、衿を半分に折って着る必要があるので、それを物理的に半分に折った状態にするための物なんですね(ですよね?)
これ、確かに便利だと思います。
着物を着慣れてる方ならきっと必要無いんでしょうけど、まだまだ着慣れていない方とかだと、物理的に衿を半分の状態に保ってくれますから、着る際も着やすいでしょうし、着てからも衿が崩れてくるのを防ぐ効果があると思います。
と、まぁ便利な着物の衿裏のスナップボタンなんですが、ちょっと厄介な性質があるんですよね。
衿裏のスナップボタン、湿気で錆びるんです
上の画像は、着物の衿裏のホックがあったのを外した状態です。
見てすぐに分かるかと思うんですが、ホックがあったであろう場所に、何やら緑色をしたシミが付いてますよね。
これは、スナップボタンが湿気などが原因で錆びて、シミになった跡です。
サビの種類は、緑青(ろくしょう)と言います。
サビのシミは、一度付いたら完全には落とせない
この緑青という種類に限らず、金属のサビは、一度生地に付くと一時的には落とせたように見えても、また時間が経つと浮いて出てくる可能性が非常に高いんですね。
つまり、サビが付いたら完全には落とせないんです。
これを無理に完全に落とそうとすると、サビの金属分と染み抜き薬品が激しく反応をして、生地を傷めてしまい、簡単に生地に穴が開いてしまったりします。
ですので、サビのシミは我々プロの染み抜き屋でも、一時的に目立たなくするぐらいしか対処が出来ないんですよね。
着物の衿裏にホックを付けると、サビが表の着物にも移る可能性がある
このホックのサビ、衿裏に留まっている状態なら、究極で言えば裏の生地を替えてしまえば済みます。
ですが。このホックのサビが表の着物にも移ってしまった場合、先にも言ったように、サビは完全には落とせませんので、着物の生地を傷めてしまう可能性が非常に高くなってしまいます。
先程の画像の衿裏のサビの緑青のシミを、生地を痛めない程度に出来るだけ染み抜きを行った画像です。
だいたい落ちてますよね。でも、あくまで見た目には・・・という状態で、また年月が経てば、サビのシミが浮いてくる可能性が非常に高いです。
少し調べたところ、今は防錆加工を施したスナップボタンも流通しているそうですので、着物を新たにお仕立てされる際は、スナップボタンそのものを付けないか、錆びないスナップボタンを付けてもらうようにお店にお願いするのが良いと思います。
また同じように衿を半分に折った状態に出来る糸を通した「引き糸」という方法もあるので、それもホックに代わる選択肢の一つだと思います。
また、既にホックが付いている着物は、サビが出ていないか点検をして、もし出ていればすぐに錆びないタイプに替えるか、引き糸にするか、ホックを外してしまうことをオススメいたします。
サビは、どんなに腕の良い染み抜き屋さんでも、完全には落とせないということをぜひ覚えておいてくださいね。