先日、着物お手入れの相談会に招かれたんですが、その席で、着物の保管方法が分からない、もしくは悩んでいる、という質問が結構ありました。
そこで今回は、現代の住宅事情に合わせた着物の保管方法を染み抜き屋の視点でお教えしたいと思います!
着物を自宅で保管中に、絶対に防ぐべきこと
着物を保管している時に一番気を付けなければならないことって、何だと思いますか?
それは、「カビ」です。
カビは皆さんご存知の通り、湿気がこもった状態が続くと発生します。
逆に考えれば、湿気をこもらせないように気をつけていれば、カビの発生するリスクをかなり減らせるというわけです。
それには、先人の知恵があります。それは「着物の虫干し(陰干し)」です。
着物の虫干しは、理想は年三回と言われています。
まず、梅雨が開けてから夏の間に行う虫干し、「土用干し」と呼ばれています。
梅雨の間に湿った着物や帯などの湿気を飛ばすために必要とされています。
次に、秋に行う虫干し、その名も「虫干し」と呼ばれています。
これは、夏の間に付いた悪い虫を追い出すための虫干しだそうです。
最後に、寒い冬にする虫干し、「寒干し」と呼ばれています。
冬は四季で一番空気が乾燥するので、湿気対策の虫干しには最適というわけです。
このように、虫干しの理想は年三回で、もちろんそれが出来るに越したことはないのですが、日常的に着物をお召にならない方にとって、年三回の虫干しは、正直面倒くさい気が重いのではないかと思います。
「年三回もやるのは面倒だから、全く虫干しをしない」 そんな風になってしまうと、待っているのは悲惨な結果ですので、私はせめて年に一回でも虫干しをして欲しいと、ご質問をいただいた方には伝えています。
最低でも年に一回虫干しをするとしたら、最適な季節はいつでしょうか?
それは、冬の寒干しです。
冬は、一年を通して最も湿気が少ない時期であり、着物の大敵である湿気を飛ばすには最適な気候なのです。
もし、年に一回しか虫干しが出来ないのであれば、それは冬に行うのがベストだと思います。
「追記」(大雪の降る地域では、冬も湿気が多いというご指摘をいただきました。雪国では、冬以外の方が良いかもしれません。)
また、虫干しは、晴天時の必ず陽の当たらない場所で行ってください。
陽の当たる場所で干すと、着物の色が退色してしまう場合がありますので、充分気をつけてください。
干す時間は、長くても半日、4時間程度でも充分だと思います。
防虫剤や乾燥剤などについて
着物の保管中に「虫食い」の被害が起きることがあります。 正絹の着物の場合、虫食いの被害が起きることは稀なのですが、全く無いわけではありません。 ウールの着物の場合、かなりの確率で虫食いの被害が起きる可能性が高いです。
虫食いで穴があいてしまった場合、穴をかけつぎで塞ぐしかないのですが、どうしても塞いだ跡が見えてしまいますので、虫食いは予防しておくに越したことはありません。
防虫剤を使用する場合、約束事があります。 それは、「複数の種類の防虫剤を使用しないこと」です。
種類の違う防虫剤を同時に使用すると、思わね化学反応が起きて着物を変色させたりする場合がありますので、防虫剤は必ず一種類だけで使用するようにしてください。
乾燥剤についてですが、よくある押し入れなどに入れておく、水の溜まるタイプの除湿剤は避けたほうが良いと思います。
水の溜まるタイプの除湿剤は、湿気を吸収するのに塩分の強い薬剤を使っているのですが、この薬剤の混じった水が溢れて着物に付いてしまい、脱色や変色を起こした事例をいくつも見てきました。
着物を保管するタンスなどに入れるものは、着物用の乾燥剤がありますので、それを使った方が良いかと思います。
虫干しは、単に湿気や虫を追い出すためではない
虫干しする最大の目的は、既に述べたように湿気を飛ばすことと虫を追い出すことなのですが、最低でも年一回タンスから出すことで、保管中に起きるトラブル(カビ・シミの変色など)を、早い段階で発見することも兼ねています。
トラブルは早い段階で発見してお手入れするほど、お手入れの金額も低く済む傾向が顕著です。
最低でも年一回の虫干しは、着物にもお財布にも優しいということですので、皆さんも、虫干しは年間の行事として習慣づけていただけたらと思います。